中華歴690年 初春
北方の勇、冷凍王が逝去した。
同刻、南方でも位人臣を極め、皇帝すら思うがままに操った宰相が臨終の時を迎えようとしていた。
名を朱武博(字は全忠)という。

黄服を着た男が病床の男にいう。
「宰相、いや全忠、朕はこれで自由になれるのじゃな。」
「御意にございます、陛下。」
「朕は皇帝を降りるぞ。」
宰相はその言葉を待っていたかのようにうなずく。
「もう奴らのめんどうを見るのはたくさんじゃ!」
さらに続く
「戦略、戦術とわめきはするが実はなく、一人前にインテリぶってしたり顔。顔を見るのもうっとうしいわ!」
一息
「それゆえの独裁だったのであろう。」
見下ろす皇帝に
「後世の筆が怖うございますな。」
質問に答えず、ちゃかす宰相。
「さしずめ、無能な君主と狡猾な宰相であろうよ。」
突然話を変える皇帝、
「冷凍王も死んだ。これで卿が死ねば契約も切れるな」
答える、宰相。
「戦がおこります。」

数日して、朱武博は死去することになる。
南蔡初期の英雄は去り、歴史は新たな英雄の出現を待つことになる。


戻る